まだ終わっていないアスベスト問題

【第1回】労働災害の現実と潜伏期間の恐怖
アスベスト(石綿)による健康被害は、もう過去の問題だと思っていませんか?
もしそうなら、その認識は今すぐ改める必要があります。
アスベスト関連疾患による労働災害(労災)の新規認定者数は、今なお年間1,000人を超えており(※1)、特に建設・解体業界にとっては、現在進行形の深刻なリスクです。
今回は、なぜアスベスト問題が「まだ終わっていない」のか、その恐るべき実態と、労働災害の現実について解説します。
■ 数十年の時を経て現れる「静かな時限爆弾」
アスベストの最大の特徴は、ばく露(吸い込むこと)してから発症するまでの潜伏期間が20年〜50年と非常に長いことです。
つまり、現在発症している方々の多くは、規制が強化される以前の1970年代〜90年代に、知らず知らずのうちにアスベストを吸い込んでいた可能性が高いのです。
この「すぐには症状が出ない」という性質が、アスベスト対策の難しさであり、恐ろしさの根源と言えます。
■ 労災認定の対象となる深刻な病気
アスベストばく露が原因で発症し、労災認定の対象となる代表的な疾病には、以下のようなものがあります。いずれも一度発症すると完治が難しく、ご本人とご家族の人生を大きく変えてしまいます。
・悪性中皮腫(ちゅうひしゅ): 胸膜や腹膜などにできるがんで、アスベストとの関連が極めて強いとされています。
・肺がん: アスベストばく露は肺がんのリスクを高め、特に喫煙と合わさるとその危険性は著しく増大します。
・石綿肺(せきめんはい/じん肺の一種): 肺が硬くなり呼吸が困難になる病気で、大量のアスベストにばく露することで発症します。
・良性石綿胸水: 胸膜に水がたまり、呼吸困難や胸の痛みを引き起こします。
これらの疾病は、数十年前に浴びた粉じんが原因です。つまり、今日の現場での対策の不備は、20年、30年後の未来の労働災害を新たに生み出していることに他なりません。この深刻なリスクから作業員の未来を守るために、事業者は何をすべきなのでしょうか?
【参考文献・統計データ】
※1:厚生労働省発表の「石綿による疾病に関する労災保険給付決定状況」によると、令和4年度においても、アスベスト関連疾病による労災保険給付決定件数は1,079件に上ります(※1)。これは決して過去の数字ではなく、現在進行形の深刻な問題であることを明確に示しています。特に建設業従事者の割合が高いことから、現在も続く建設・解体現場での潜在的なリスクの高さが浮き彫りになっています。
※1:厚生労働省「令和4年度石綿による疾病に関する労災保険給付決定状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36636.html
【次回予告】
次回は、労働災害を未然に防ぐために法律で定められた「事業者の5つの義務」について、具体的な対策を詳しく解説します。
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