作業員の命を守るために。事業者が知るべきアスベスト対策、5つの重要ポイント

前回は、アスベストによる労働災害が長い潜伏期間を経て発症する、深刻な問題であることを解説しました。
今回は、未来の悲劇を防ぐため、事業者に法律で厳しく課せられている義務について、
分かりやすく5つの重要ポイントに整理し、その具体的な内容と法的根拠を詳しく見ていきましょう。

事業主には、労働契約法に基づく全般的な「安全配慮義務」があり、作業員を危険から守る責任があります。
アスベスト対策において、この義務を具体的に定めているのが「石綿障害予防規則(石綿則)」や「大気汚染防止法」などの法令です。

本記事では、事業者が特に遵守すべき重要な義務を5つのカテゴリーに分けて解説します。

(1)有資格者による「事前調査」と結果の共有

工事を始める前に、アスベスト含有建材の有無を、まず有資格者(建築物石綿含有建材調査者)が調査することが法律で義務付けられています。そして、その調査結果は現場に掲示し、全ての作業員に周知しなければなりません。

法的根拠:
【調査の義務】
  大気汚染防止法 第18条の15
  石綿障害予防規則 第3条、第3条の2

【調査結果の報告義務】
  大気汚染防止法 第18条の17 (一定規模以上の工事の場合、調査結果を都道府県知事へ報告する義務)

(2)飛散を防ぐ「ばく露防止措置」の徹底

事前調査の結果に基づき、アスベストの飛散レベルに応じた措置が必要です。例えば、吹付けアスベスト(レベル1)の除去作業では、作業場所の隔離、負圧除じん装置の設置、湿潤化といった厳重な措置が求められます。

法的根拠:
 石綿障害予防規則 第4条、第5条、第6条(作業計画、作業の届出、除去等の作業におけるばく露防止措置)
 大気汚染防止法 第18条の14(特定建築材料の除去等の作業基準)

(3)適切な「呼吸用保護具」の選定と使用管理

作業レベルに応じた適切な防じんマスク(DS2/RS2以上)や電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)を作業員に支給し、使用させることが義務です。さらに、顔にマスクが密着しているかを確認する「フィットテスト」を定期的に実施し、正しい装着を徹底させることが極めて重要です。

法的根拠:
 石綿障害予防規則 第14条(呼吸用保護具の使用義務)
 労働安全衛生規則 第593条(保護具の着用等)

(4)労働者への「石綿特別教育」の実施

アスベストを取り扱う作業員に対して、その有害性、ばく露防止措置、保護具の使用方法など、法律で定められた内容の特別教育を実施する義務があります。これは、作業員自身の安全意識と知識を高めるための根幹となる措置です。

法的根拠:
 石綿障害予防規則 第27条(特別の教育)
 労働安全衛生法 第59条(労働者に対する安全衛生教育)

(5)長期的な「石綿健康診断」の実施と記録保存

対象となる作業員に対し、雇入れ時、当該業務への配置替え時、およびその後6ヶ月以内ごとに1回、石綿健康診断を実施しなければなりません。さらに、その結果記録は40年間という長期間にわたり保存することが義務付けられています。

法的根-拠:
石綿障害予防規則 第40条、第41条(健康診断の実施、健康診断結果の記録)
労働安全衛生法 第66条(健康診断)

これらの義務を確実に果たすことが、作業員を守り、ひいては企業の信頼を守ることに繋がります。

会社の対策は不可欠ですが、それだけでは万全とは言えません。

【次回予告】

最終回となる次回は、アスベスト労働災害が「発生してしまった場合」の企業の責任と、取るべき具体的な対応について解説します。

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